本のしょうかい
『みずをくむプリンセス』
スーザン・ヴァ―デ 文 ピーター・H・レイノルズ 絵
さくまゆみこ 訳
さ・ら・え書房
アフリカに暮らす少女、ジージーは毎朝まだ暗いうちにお母さんに起こされます。
遠くの川まで水をくみに行くのがお母さんとジージーの日課なのです。空っぽのツボを頭に乗せてお母さんと二人で遠い道のりを歩いていきます。
たくさんの人が遠くから水を求めてその川にやってきます。順番を待ってようやく手に入れる水は泥の混じった川の水。それでも生きていくためには大切な水。ジージーがくんでくる水を家族は待っています。
母娘は水が入っている分重たくなったツボを頭に乗せて来た道をまた戻ります。途中で喉が乾いても、その水を飲むことは出来ません。汚い水は沸かさなければならないからです。
運んできた貴重な水でお料理も洗濯もします。身体も洗います。家族全員が生きるためにその水を大切に使っています。
アフリカの大地で力強く生きる少女ジージーの、いつか冷たくてきれいな水を自由に使えるようになりたいという願いがどのページからも強く伝わってきます。
水道の蛇口をひねれば自然に流れてくる安全な水を、自分たちで毎日くみに行かなければ手に入れられないなんて、私たちには想像できない暮らしです。
あとがきでは実際に水をくみ運ぶ子どもたちの写真や井戸をつくるプロジェクトについて紹介されています。
水に不自由しない自分たちにできることを考えてみたくなるこの絵本は今年の青少年読書感想文全国コンクール(小学校低学年の部)の課題図書の一冊です。