
本のしょうかい

『サンタさん』
長尾玲子 作
福音館書店
季節は春、サンタさんが羊の毛を刈っています。今年のクリスマス、はなちゃんに手編みのマフラーをプレゼントするためです。
刈った毛を洗って干してほぐして紡いで、長い毛糸が出来ました。それから緑色に毛糸を染めてまた干して、丸めて毛糸玉をたくさん作ります。
いつの間にか季節は夏、サンタさんの着ている洋服も半袖、半ズボンになりました。「まだまだだ」サンタさんは一生懸命マフラーを編んでいます。秋になり、冬になり、いよいよ完成です!
さぁ、はなちゃんに届けるぞ。では、サンタクロースの服装に着替えて出発です。
サンタさんはトナカイには乗らずはなちゃんのおうちまで歩いて行くようです。森を抜け、橋を渡り、山を越え、海を渡り、疲れた時はトラックの荷台に乗せてもらったり。道に迷いながら、はなちゃんのおうちを目指して、まっすぐまっすぐ進みます。
夜になってようやくはなちゃんのおうちに到着しました・・・。
刺繍作家、長尾玲子さんの刺繍によるクリスマスの絵本です。
とにかく美しく、可愛らしく、刺繍でこんな風に表現できるなんて!とページをめくるたびにびっくりし、そして1ページ、1ページうっとり見とれてしまします。
長尾さんは4月にこの絵本のための刺繍の作業をスタートさせ、完成したのは11月だったそうです。絵本の中のサンタさんも春から冬までかかってマフラーを編み上げます。窓の外の景色、羊の毛並みもその時間の流れを教えてくれています。
長尾さんがひと針ひと針刺繍を刺す時間とサンタさんがひと編みひと編み、編み棒を動かしていた時間が丁度同じくらい、そんなところもなんだかステキ。本全体から手仕事の温かさが伝わってきて、とっても幸せな気持ちになります。