本のしょうかい
『あるひ あのとき』
あまんきみこ 文 ささめやゆき 絵
のら書店
近所のユリちゃんが、それまで遊んでいた六本のこけしと一緒にごろりと横になり眠っています。
その姿を見ていたわたしは中国の大連で過ごしていた子どもの頃のこと、大切にしていたこけしの「ハッコちゃん」との日々を思い出したのでした。
戦争がはじまり不安な暮らしが続きました。幼かったわたしは防空壕の中でハッコちゃんを抱きながらお母さんに身を寄せていたことをおぼえています。
暑い夏、日本は戦争に負けました。そして敗戦の日から二度目の冬の頃のこと、家にあったものが毎日少しずつ売られていき、売れなかったものはダルマストーブのたきぎになっていきました。
でも大事な大事なハッコちゃんは売られることも燃されることもありませんでした。 今日も一緒だ、よかったね、よかったよ。一人っ子のわたしには妹のようなハッコちゃん。毎日一緒にいることを確認しては安心しました。
そして日本に引き上げる日が三日後に迫ったとき・・・。
あまんきみこさんが少女時代大連で過ごしたころの記憶をたどり、平和を祈りながら書き上げた作品です。
ささめやさんの絵があまんさんの描く少女の心の動き、切なさ、悲しみを一層深く伝えています。