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本のしょうかい

行ったり来たり大通りの表紙画像

『行ったり来たり大通り』
五味太郎 作

絵本館

ここは町の大通り。道に沿ってビルやお店、会社、病院、図書館や美術館と様々なものが立ち並んでいます。駅やスタジアム、サーカスのテントも見えています。

進んでいく人、引き返す人、集まってくる人、子ども、大人、それから動物やロボット、と大通りは大賑わい。

最初のページの「この絵本、とくにストーリーはないんだってさ」という男の子の言葉に示されているように、この絵本は一つのお話が展開されていくわけではありません。

大通りを行き交う人たちのせりふを読んで、わたしたち読み手がこの通りを行ったり来たりすることになる、という五味さんの仕掛けがたっぷり織り込まれています。

たとえば、おかあさん「おもちゃ どうしたの?」 子ども「なくなった!」あれ、この子はどこでおもちゃをなくしたんだろう?と読み手は先を急ぎます。他の登場人物のことなど放ったらかして、男の子の失くしたおもちゃは何かな?どこかな?と見つかるまでページを進めます。

(この親子は通りの右からやって来ているので後戻りはページを先に進めることになるのです。)

おもちゃが見つかりました。今度はそのページに出てきた「たまにはさっぱりするか」というぼさぼさ頭のおじさんの独り言に、床屋さんは確か前のページにあったゾ、と今度はページをもどしたりするのです。

どの人の言葉に反応するかで進み方、戻り方はさまざま。いったいいつまで本の中で行ったり来たりして遊ぶことになるのでしょう・・・。

こうなったらみんなで行ったり来たり。この大通りに一歩足を踏み入れたらしばらく帰ってこられなくなるのは仕方ない!時間を忘れ五味ワールドにどっぷりつかって楽しむしかありませんね。

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