本のしょうかい
『たらばがにのはる』
あんどうみきお 作 おのきがく 絵
福音館書店
北国の海の底にも春がやってきました。深くて暗い海の底で暮らしていても、タラバガニのお母さんにはちゃんと春がやってきたことがわかります。
タラバガニにとっても春はうれしく、また忙しい季節です。お腹の子どもたちを卵から返し、自分たちのこうらも脱ぎ変えなければならないからです。
のっそりのんびり起き出したお父さんガ二と共に活動を開始しました。
まずは海の浅い場所へ移動して行きます。長い旅を終えて一年ぶりに帰ってきたマスたちにあいさつしたり、砂の下にかくれていたオヒョウにびっくりしたりしながら海の中を進んでいきます。危険な敵がいないかを確認するお父さん。
無事子どもたちが生まれ、次も命がけの仕事、こうらの脱ぎ変えです。途中でタラの軍団が攻撃してきました。お父さんガ二は必死に戦いお母さんガ二を守ります。こうして協力しあって二つの大仕事を終えたタラバガニの夫婦。
「はるは、いそがしいわね」「しかし、これで さっぱりした。やっぱり はるは いいな」こんな会話をしながら夫婦はまた海の底へ帰っていきます。
安藤さんと小野木さんの素朴でありながら深い味わいのある春の海の中のお話、1970年の「こどものとも」の中の一冊です。