
本のしょうかい

『いっぽ、にほ・・・』
シャーロット・ゾロトウ 文 ロジャー・デュボアザン 絵
ほしかわなつよ 訳
童話館出版
春の日の朝、小さな女の子がお母さんに導かれながら家の玄関の階段を下りてきました。これから二人でお散歩です。
おかあさんは女の子の歩調に合わせて、ゆっくり進みます。いっぽ、にほと行くと草の中から顔を出している黄色いクロッカスの花を見つけました。女の子はそばまで行ってじっくり観察します。
それからまたいっぽ、にほ、さんぽ、おとなりの庭を歩きまわる灰色のネコが見えました。またいっぽ、にほ、さんぽ、よんほと歩くと、空に舞う青い鳥が目に入ってきました。
今度は道ばたの白い小石、女の子は何を見ても目新しいのでしょう。風にひるがえる洗濯物にだって興味津々のようすです。そうして何か見つけるたびに立ち止まっては「みて!」「あれはなに?」とおかあさんに呼びかけます。
楽しく歩いているうちにそろそろおひるごはんの時間です。二人は来た道をまたいっぽ、にほ、ともどります。
疲れてしまったのか、女の子はお家の玄関の階段のところでおかあさんに「だっこ」とおねだり。
お母さんは女の子を抱っこしながら今日のお散歩の場面を一つずつ振り返り、幸せな気持ちになります。ふだんは何とも思わない当たり前の家の周りの風景も幼い子と一緒に歩けば、こんなに違って見える、と気づくお母さん。いっぽ、にほ、と今日も新しい発見に出会う喜びが大きいのはお母さんの方かもしれません。
子どもの気持ち、親子のことを描いたらピカイチのゾロトウさんの文と鮮やかな色彩のデュボアザンさんの絵が読み手にもステキなお散歩をプレゼントしてくれます。