
本のしょうかい

『ことりのギリ』
マリオ・ラモ 作 平岡敦 訳
光村教育図書
動物の国に住む小さなライオン、レオンは他の動物たちに約束をしました。「ぼくが王さまになったら盛大なパーティーをひらいてみんなを招待してあげよう。」ところが、王さまになったとたんそんな約束はどこかへ吹っ飛び、レオンはゴリラを兵隊にし、動物たちを自分の思いどおりに従わせようとします。
王さまの前ではひざまずき、深ぶかとおじぎをする、王さまの昼寝の邪魔にならないようにお話はひそひそと・・・。この王さまレオンの傲慢ぶりに動物たちは不満でいっぱい。でもレオンはもう自分はとってもえらいと思い込み、次々に自分勝手な命令を下しみんなを苦しめます。
そうしてある日、鳥たちに向かって空を飛んではいけない、ひなが生まれたら羽を折ってしまえ、という命令まで出したのでした。レオンは不満を爆発させる動物たちの怒りをそらすために、今度はなんととなりの国と戦争を始めてしまいます。
そんな国の片すみでことりのギリが誕生しました。お母さんはギリの羽を折ることなどできません。ギリに飛んではダメと言い聞かせますが・・・。こんなに自分たちをいじめるレオンがどうして王さまなのかと疑問に思うギリのとった行動は?
王さまレオンの金の冠とギリの羽、この二つが権力と自由の象徴として見事に描かれ、作者ラモさんからの深いメッセージを感じる作品です。