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おじいちゃんの口笛の表紙画像

『おじいちゃんの口笛』
ウルフ・スタルク 作   アンナ・へグルンド 絵
菱木晃子 訳

ほるぷ出版

ぼく(ウルフ)にはおじいちゃんがいる。お小遣いをもらったり、一緒に魚釣りをしたり、お誕生日には葉巻をプレゼントしたり、おじいちゃんとの楽しい時間の話をぼくから聞いたベッラはとてもうらやましそうだった。

そこで、ぼくはベッラと老人ホームへ出かけベッラのおじいちゃん探しをすることにした。グスタフントさんの庭からとってきたキンセンカの花を持って。老人ホームにいるのはもちろん全く知らないおじいちゃんやおばあちゃんたちだ。そんなに簡単におじいちゃんになってくれる人がみつかるだろうか。

ベッラのおじいちゃん候補はすぐに現れた。亡くなった奥さんの写真を飾った机で一人トランプをしていたニルスさんだ。はじめは訳がわからなかったニルスさんだったけれどすっかりベッラを受け入れて食堂でみんなに「この子は孫のベッラです!」と紹介してくれた。

その日からぼくとベッラはニルスさんのいる老人ホームへ通うようになった。一緒に庭へ出てニルスさんはたこを作ってくれた。奥さんの形見のステキな絹のスカーフとニルスさんのネクタイで、見たこともないきれいなたこができあがった。それから口笛もふいてくれた。ニルスさんお気に入りの曲『ヨハンナ、口笛がふけるかい?』。奥さんもヨハンナという名前だったそうだ。

二人はニルスさんの誕生日を「今度の金曜日じゃない?」と勝手に決めてステキなお祝いを計画する。アルバイトをしてお金をためて、グスタフントさんのおうちのサクランボの木に無断で登ってパーティはスタートした。子どもの頃に返ったような無邪気なニルスさんと過ごす楽しい楽しいひととき。

それから数日後、ベッラが何日もかけて練習した口笛がお土産、と二人がいそいそとおじいさんを訪ねていくと・・・。

ウルフとベッラのニルスさんへの子どもらしい思い、それとは逆に老いや死をセンチメンタルにならずに冷静に見つめ、たんたんと受け入れていくこの二人の姿は大人以上に大人らしく、すがすがしささえ感じられる。そして同時にとても切なくもなるこのお話はスウェーデンの人気作家、スタルクさんの作品。

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