
本のしょうかい

『どろんここぶた』
アーノルド・ロベール 作 岸田衿子 訳
文化出版局
ロベールさんが描くなんとも愛らしいブタくんのお気に入りは、やわらかーいどろんこの中に、ずずずーっとしずんでいくこと。うーん、何となくわかります、その感触の心地良さ。田んぼに足を入れた時の感じに似ているのかな。ぬるっとしながら沈んでいくあの感じ。
ブタくんは田舎のお百姓さんのおうちのブタ小屋で平和にくらしていました。ところがある日、きれい好きなおばさんが大掃除の最後に「ここがいちばんきたないねぇ。」とブタ小屋をきれいにした上に、外のどろんこの沼まできれいに掃除機で吸い取ってしまいました。ブタくんの怒りはただごとではありません。もう掃除機なんか大嫌い、きれいすぎる場所なんかにいられない、と逃げ出します。
きたないところ、大好きなどろを探して歩き続け街中でとうとうみつけました。大好きなどろんこ沼。ところがところがそれは・・・・。
家出したブタくんは結局大好きなおじさん、おばさんと田舎へ帰ります。おうちに着くころ、あらしになって雨がざぁざぁと降ってきました。新しくできたどろんこ沼の沈み心地はどうかな。ブタくんの満足そうな表情に読み手の私たちも「あー、よかった。」ホッとひと安心。
『ふたりはともだち』、『ふくろうくん』などの作品で知られる作者のアーノルド・ロベールさんはアメリカを代表する絵本作家です。他にブタが出てくるお話には『しりたがりやのこぶたくん』があります。