
本のしょうかい

『星どろぼう』
アンドレア・ディノト 文 アーノルド・ローベル 絵
やぎたよしこ 訳
ほるぷ出版
もし、あなたが“星どろぼう”になることを許されて、どうぞ好きな星を持っていってください、ということになったらどうしますか?私だったら、ぜったい冬の星めぐりに欠かせないオリオン座の中央のあの三ツ星を盗んで、空を見上げるみんなをびっくりさせたい・・・そんなことを思いながらページを開くと、なんとこの本の中の星どろぼうは夜空の星をぜーんぶ盗んでしまいます。
空にはぽつんとおつきさまだけ。けしからん、怒った村人たちは星どろぼう捕獲作戦に出ます。見事に捕まったどろぼうの家の地下室の樽の中には星がいっぱい!村人たちが星にうまってしまうほどです。
さて、星は見つかったけれども、今度は星を空へ返さなければなりません。その役目はもちろん星を盗んだどろぼうの仕事だ、と村のおまわりさん。どろぼうは星でいっぱいになったふくろをかかえ高く高くはしごを上って空におしつけてみましたが、星はちっともくっついてくれません。どうやったら星たちをもとのとおり空に返せるのでしょうか。ステキなステキな方法、村の人たちみんなもとっても幸せな気持ちになれる方法でディノトさんはお話をしめくくっています。
星を盗んだどろぼうはいけないことをした人だけれど、何だか憎めません。星どろぼうのお陰で村人みんなが星にさわることができたのだし、最後はひとりひとりが・・・・
『ふたりはともだち』『どろんここぶた』でおなじみのアーノルド・ローベルさんの柔らかいタッチの挿絵が児童向けの作品はこれが初めてというディノトさんの文と共に優しく語りかけてきます。
1978年に出版されしばらく絶版になっていましたが、2011年12月に待望の新版発行となり今書店にズラリと並んでいる『星どろぼう』です。