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本のしょうかい

はじめてのおつかいの表紙画像

『はじめてのおつかい』
筒井頼子 作  林 明子 絵  

福音館書店

ここはみいちゃんのおうちのダイニング、何もかもが忙しそうです。ガス台の上ではお鍋やヤカンが「はやく火を止めて!」といわんばかりに湯気をふき、ベビーベッドの中の赤ちゃんは泣き声をあげています。流しには洗い物、床には掃除機、ママが動かすワゴンの上にはこれからホットケーキでも焼くのか、大きなボールや卵がのっています。みいちゃんがお絵かきしているテーブルのクロスは何だか傾いてずり落ちそう。みいちゃん、クレヨンやごほんが床に落ちているよ・・・。

てんてこ舞いのママの口から楽しくお絵かきしていたみいちゃんをドキンとさせるひとことが。「みいちゃん、ひとりで おつかい できるかしら」「ひとりで!」

さて、五歳のみいちゃんのはじめてのおつかいの旅?がはじまります。100円玉二つ握りしめ、近所のお店へ牛乳を買いに出発です。「いってらっしゃい。」お庭で寝そべっていたお隣の犬も起き上がって見送ってくれています。だいじょうぶ、みいちゃんもう五つだもの、ママのお手伝い、ちゃんとできるよね。

ママといっしょならすぐなのに一人だととっても遠くに感じるお店への道のりです。坂道でころんだひょうしに百円玉もころがってしまったり、お店のおばさんになかなか声をかけられなかったり、おつりをもらい忘れたり、みいちゃんのこの小さな冒険に読者もハラハラドキドキ、でも何だか嬉しくほほえましくなるハラハラドキドキです。坂の下に赤ちゃんとお迎えに来てくれたママの姿を見つけて駆け出すみいちゃん、その表情は読み手がまずそれぞれ思い描くことにしましょう。みいちゃんがどんな顔をして坂道を駆け下りてきたのか、それもちゃんと林さんは描いています。さてどこに?

どのページにもニコリとしてしまう林さんの楽しい心配りが感じられます。道ばたの掲示板に貼られた絵の教室案内、絵の先生はだあれ?迷子のネコはどこにいる?みいちゃんの目指すお店の名前は?鳥かごから抜け出たオウムの居場所は?

繰り返し繰り返しページを開いては何度でもみいちゃんのお買物に同行し、応援し、ホッとし、「がんばったね。」と声をかけたくなる、そんな一冊です。筒井さんと林さんコンビの作品には他にも『こんことり』、『おでかけのまえに』、『おいていかないで』、『あさえとちいさいいもうと』などがあります。

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