こんな本 あんな本

本のしょうかい

ちいさいおうちの表紙画像

『ちいさいおうち』
バージニア・リー・バートン 作  

岩波書店

「朝になると、お日さまが のぼります。ゆうがたには、お日さまが しずみます。きょうが すぎると、またつぎの 日がきました。けれど、きのうと きょうとは、いつでも すこしずつ ちがいました・・・ただ ちいさいおうちだけは いつも おなじでした。」

町ってどんなところ? とずっと向こうの町の明かりを見ながら静かに田舎の暮らしを楽しんでいたちいさいおうち、しかしある日、おうちの周りは目まぐるしく変わり始め、気がつくと遠くの風景だったはずの町の中心に自分だけが昔の気持ちのまま変わらぬ姿でぽつんと建っていました。

おうちはいつも同じでいたはずなのに・・・。大切なものを失って初めて気づくこと・・・。大切なものを奪ったのは人間で、おうちはちっとも悪くない・・・。

読んでいる私たちは何だかおうちに申し訳ないような気持ちになってきます。そして都会の喧騒に疲れ果てたおうちはやがて車で運ばれ、再び田舎での幸せな日々を迎えることになって、よかった、とホッとします。でも、またここもいつか・・と心配になったり、どうぞこのまま、とおうちのちいさな願いを裏切らないように、なんて思ったりもします。

あまりにも有名なこの『ちいさいおうち』は1930年代のアメリカ「絵本の黄金時代」の代表作家、バージニア・リー・バートンのコルデコット賞受賞作品です。バートンさんは生涯で7作品の絵本を残しましたが、どれも自分の息子たちを意識して描いたそうです。バートンさんは子どものもつ細やかな注意力を指摘し、この『ちいさいおうち』の見返しの絵の中でひとつだけ車をバンクさせておくと、次男のマイクがすぐに見つけ出した、というエピソードも残っています。乗り物の歴史として絵を見ても楽しい作品です。

原作のタイトルは『THE LITTLE HOUSE――HER STORY』さぁ、彼女のお話に耳を(心を)傾けてみましょう。

矢印バックナンバー

▲このページのトップへ
84O