
本のしょうかい

『かしこいビル』
ウィリアム・ニコルソン 作
まつおかきょうこ・よしだしんいち 訳
ペンギン社
ある日、メリーちゃんのもとへドーバーの白いおうちに住むおばさんからこんなお手紙が届きました。「メリーちゃん、うちへあそびにいらっしゃい。いくつおとまりしてもいいですよ。」このご招待に大喜びのメリーは早速お返事を出してお泊りの準備です。
お出かけ前の用意は楽しいものです。あれを入れて、これも持って、とメリーはお気に入りを次々に引っ張り出し、何とかと全員トランクへ押し込もうとがんばります。ところが大失敗。一番の大切なお友だちの人形の兵隊“かしこいビル”を詰め忘れて出発、ドーバー行きの汽車に乗ってしまうのです。
メリーのお供をしようとちゃんとトランクの横で待機していたはずなのに置いていかれたかわいそうなビル。ぼくだっておばさんに会いたかったし、白いおうちに一緒に行きたかった――ビルの悲しみの涙の量ははんぱではありません。
でも、かしこいビルは本当に賢くて・・・・。さてどうしたのでしょうか?
本の最後の一ページは訳者の松岡享子さんの解説です。それがまたすばらしく、読めばみんな「うーん、そうか」と納得し、必ずもう一回最初からページを開きたくなるはずです。どこか懐かしさを感じるニコルソンさんの絵がまたステキなこの絵本。それにしても賢く健気なビル、私も花束あげたくなっちゃいます。