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おじさんのかさの表紙画像

『おじさんのかさ』
佐野洋子 作

講談社

「あめが ふったら ポンポロロン、あめが ふったら ピッチャンチャン」ちょっと憂鬱な雨の日も、このフレーズを自分流のメロディーで口ずさむと何だか楽しくなります。お気に入りの傘を広げれば、気分は最高。もうすっかり佐野洋子さんの世界です。そう、『おじさんのかさ』のおはなしの世界です。

ご自慢の立派な傘を大事に大事に持ち歩くおじさん。でも雨が降ってきてもおじさんは傘をさそうとはしませんでした。お気に入りの大事な傘だから汚れるのが心配なのです。少しくらいの雨なら見てみぬふりをしてぬれたまま歩き、ふつうの雨なら雨宿りしたり、傘を手に持っているのに他の人の傘に入れてもらったり、なんと大雨の時はお出かけを控えるのです。変なおじさんです。でもそれだけ傘を大事にしているともいえます。

さてさて、とうとうおじさんが傘をさす時がやってきました。おじさんが傘をさそうと思ったのはどうしてでしょうか。

「あら、かさを さしたんですか、 あめが ふっているのに。」ぬれた傘を持って帰ってきたおじさんを見てびっくりした奥さんのことばもおかしくて楽しくなります。

この『おじさんのかさ』はサンケイ児童出版文化賞に輝く傑作。佐野洋子さんは『100万回生きたねこ』をはじめ、たくさんの人気絵本を生み出しています。エッセイも素晴らしく、小林秀雄賞を受賞している佐野さんです。その豪快、そして繊細な佐野さんの文章に読み手はノックアウトされ、勇気をもらい、励まされます。2010年11月の訃報はとても残念でしたが、たくさんの作品の中にいつまでも佐野さんを感じることができる幸せを私たちに残してくださいました。

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