
本のしょうかい

『はだかの王さま』 アンデルセン 作 乾侑美子 訳
バージニア・リー・バートン 絵
岩波書店
みんながよく知っているアンデルセンの『はだかの王さま』。デンマーク語の原題は『皇帝の新しい服』です。
日本でもいろいろな版が出版されていますが、これは『ちいさいおうち』でおなじみのアメリカの絵本作家、画家のバージニア・リー・バートンさんが絵を担当しています。バートンさんは小さい頃からお父さんに読んでもらった『はだかの王さま』が大好きで、いつか自分で絵を描きたいと思っていたそうです。本を開いてみると、お話が始まる前のページに大型本を開くお父さんを囲む3人の子どもたちが描かれています。お父さんへの感謝の気持ち、子ども時代の幸せだった時間が本全体から伝わってくるような『はだかの王さま』です。
訳者は乾侑美子さん。うちの図書館の評議員をしてくださっていましたが、残念なことに今年2010年夏に急逝なさってしまいました。乾さんは「本当だったら石井桃子さんがなさるような大仕事、それがわたしに回ってきて、とっても嬉しかったしチカラが入りました」とこの本を手渡してくださいました。
「なんて気品にみちた王さま!」こんなにすてきな王さま、“はだかの王さま”にわたしはびっくりしてしまいました。バートンのきめ細やかで美しい描写に誘われて、読み手は何回もこの本を手にし、ページをめくり、そのたびに新しい発見、新しい喜びを感じるはずです。